2019年3月19日(火)カテゴリ:お知らせアートデザイン印刷本・装丁・造本泉鏡花

「榲桲(まるめろ)に目鼻のつく話」刊行!

平成最後の鏡花本、泉鏡花×中川学「榲桲に目鼻のつく話」が刊行されました。

タイトルからして榲桲(まるめろ)という聞き慣れないもの。まるめろって何かご存知ですか?

届いた時、とても甘い香りが部屋中に。果実全体にはふわふわ産毛のようなものがあります。

約2ヶ月後、目鼻がついたようにも(^○^)

「西洋かりん」とも呼ばれる果物なんです。原産はイランやトルキスタンなどの中央アジアで、その後ヨーロッパやアメリカ等に広がったよう。見た目はカリンに似ていますが表面に産毛のようなものがあります。生食には適しておらず、果実酒やハチミツ漬け、ジャムなどに利用されるものとのこと。ジャムのマーマレードの語源とも。(諸説あり)食べずにそのまま部屋に置いて芳香剤代わりに使うということもあるみたい。日本での栽培時期は11〜1月頃という事をネットで知り、やはり本物を知らなければと山形の農家さんから1箱購入。届くと箱を開けずともなんとも甘い香りが漂いびっくり!なるほど、と。とりあえず事務所にひとつ置いて家ではまるめろ蜂蜜漬けにして美味しく頂くことに。

それはそうと。まるめろのお話。

《帯と発発行元サイトから抜粋》

“少年にとって少女は一人残らず年上である。 

少年の領域に留まろうとする限り 少女の謎は解けない”

ー 山本タカト

 

ー今日は此の家に居り侍り、御方様たちおなぐさみ。ー

暗闇坂にある榲桲(まるめろ)の樹の奥、古い武家屋敷には秘密が隠されていた。そして向かい合う懸札の家で行われる大人たちの閉ざされた逸遊嬉戯。あの少年の日々、一人の少女をめぐるすべてが妖しく謎めいていた。

 本書は、泉鏡花が性に目覚める直前の遥か少年期に想いを馳せ、

大人たちと少女のミステリアスでエロティックな関係を鏡花一流の思慕譚にまとめた異色作の絵本版です。

中川学とは泉鏡花へのオマージュを捧げる画家同士、山本タカトのエッセイ、泉鏡花記念館学芸員の詳細な解説文も収録しています。

 

大正9年の作品。この新本制作のお話を聞いたのは約2年前。泉鏡花記念館の学芸員、穴倉さんが次はこれ、と。僕はもちろんタイトルすら知りませんでした。聞けば鏡花通でもマイナーなものらしく、中川さんも知らなかったようです。内容も鏡花ものに多く見られるお化けや異界ものではなくちょっとエロティックな作品。最初よく読んでもよくわからなかった(-_-;)とにかくず〜っと頭の中には寝ても覚めてもカリンを見てもまるめろがあり、それがついに2019年3月に形になりました。中川さん曰く、「龍潭譚」「化鳥」「朱日記」と鏡花作品に絵をつけさせていただき、次は何か鏡花先生に恩返しのできるようなものを本にしたかったとのこと。私にとっても鏡花作品3作目の装幀になります。

中川さんが少しエロティックな作品を描き新境地を開く中、私も鏡花本の装幀家、小村雪岱や橋口五葉をオマージュし新しく美しいデザイン、装幀に挑戦したつもりです。なのでちょっとでも多くの方に手にとっていただきたい&知っていただきたいので、装幀仕様や意図などご紹介。

まず今回、展覧会記念版(泉鏡花記念館内物販コーナーや発行元ネットサイトでのみ販売、取扱われる特装本)と普及版(全国書店や各書店ネットサイトなどで一般的に取扱いされる本)の2種類の本をご用意しました。

特装版は記念館で販売中。でも行けないという方、大丈夫です!こちらのネット通販でご注文、ご購入可能です!《3,000円(税別)以上は送料無料!

 

《展覧会記念版》500部限定

仕様:A4変形版(200x200mm)上製、120頁

見返し:スミ色 小口・天地:黄色塗 帯無し

発行・発売:エディシオン・トレヴィル 刊行:2019年3月1日   価格:3300円(税別)

著者サイン本 特製薬袋内に蔵書票、栞他おまけつき

 

《普及版》

仕様:A4変形版(200x200mm)上製、120頁

見返し:竹(緑)帯付

発行:エディシオン・トレヴィル 刊行:2019年3月1日(書店販売は3月中〜下旬)

発売:河出書房新社 価格:2300円(税別)

 

カバー紙は特殊紙(タントセレクト)で風合いがあり、つい触りたくなるようにしています。黄色いイメージも幸福感、魅惑さ、幼さ、注意喚起を表現。まわりに見える装飾は西洋書籍の装幀にも影響を受けた橋口五葉リスペクトです。あくまでも中川さんの描く音羽ちゃんの絵を引き立てるための福神漬的な役割。ファンシーな感じが可愛くもあり、いわゆる文学書です、というよりビレバンなどにも置いてあってもいい感じでしょ?デザインは木戸穴から覗いて向こう側に見える音羽ちゃんとまるめろをイメージしています。

題字は箔押し艶消し金。高級感も出て目を引かせます。背表紙の題字も同仕様です。

普及版の帯とカバー裏。特装本にはバーコード表記がありません。これが大事。ひと昔はなかったのが普通だったんですが、いつの頃からか当たり前になっててちょっと冷めるんです。加えて帯もありません。帯もそう。広告として付けるのが当たり前。でもせっかくカバーデザインを美しく見せるために苦労したのに付いて台無しになることも。ちなみに普及版にはバーコード(きれいに剥離可能なシール)と帯が付きますが、できるだけ効果的な仕様にしたつもりです。

見返し。特装版(上)は里紙スミで恐怖、孤独、死、高級感を、普及版(下)は里紙竹でまるめろの匂いや香りから得る安心感や若さを表現。

特装版のコバ、天・地は黄色に。とにかく真っ黄色の本にしたかったんです。鏡花本としても新しい試み。聖書や昔の文芸書などには天金などが多かったですが、塗る作業に時間がかかる&コスト高でなかなか現実的に厳しい中、職人さんに頑張っていただけました。ホント感謝です(^^♪

めくると黄色は見えません。あら不思議。

上製本かがり綴じは一冊ずつ職人の手作業!またチリ(本の表紙が中身より出っ張っている部分)は大体3mmですが2mmにしててなんとなく手にフィットするようにしました。(特装・普及版共通)

中川さんのサインを終えたものとサインを待つ特装版。積むとコバの黄色がよくわかります。

表紙。アダムとイヴとまるめろ。大正モダンを彷彿させるデザイン。一説ではアダムとイヴの禁断の果実はりんごではなくまるめろだったのでは?と言われています。(旧約聖書には禁断の果実がりんごだった、という記載はないようです)MARMELOの表記もポルトガル語の元表記にしています。

ソデ(折返し)部分。ここも作家紹介や広告的な扱いが多いところですが、前後ソデ共にカバー絵をリンクさせ装飾模様に。ただ、装飾するだけではなく実は前後のソデを合わせると、何かが見えませんか?!何人気づく方がいるかわかりませんが、こういうちょっとした遊び心も本だからできる醍醐味だと思います。

本文。フルカラーの絵と特色1色(濃緑)の文章頁で構成。中川さんの繊細かつダイナミックな構図と世界観が大きく見開きで広がります。

文字表記は泉鏡花記念館学芸員、穴倉玉日さんの監修の元、全て旧仮名旧漢字表記。これは中川さんのこだわりでもあり、鏡花先生の美しい文章をそのまま現代版で表現しています。文字色は特色1色濃緑。可読性を持たし読みやすいように文字の大きさや行間にもこだわりました。紙も少しクリーム色。真っ白よりも少し落ち着いた雰囲気が出て、かつ目にも優しいのです。

画像は一部ですが、前、静、気などPCフォントでは無い漢字も多く、結構文字を作りました。ぜひ手にとってゆっくり読んでみてください。

作品の中に出てくる掛札の文字は絵草子「龍潭譚」、「絵本 化鳥」等の題字でもおなじみ書家、上田普さん。上田さん曰く、少しこってりとしたヌメリ感のある様な墨、油煙墨(ゆえんぼく)を使用。文字は書道で言うと若い時代の書風の江戸後期位の線に粘りのある感じのモノをイメージしています。ホントはもう少し文字を崩す書風なのですが、ソレを読みやすく現代に近づけました。また、リアルさを追求し実際の掛札のサイズ感で書いています。とのこと。さすがこだわり抜いてます(^^♪

特装版のみに付くおまけです。音羽ちゃんカードと蔵書票は4種、まるめろ栞は6種のうち1種のみが特製薬袋(実際薬袋として病院等で使用されている袋に特製ラベルデザインを印刷!)の中にランダムに入ってます。ひとつひとつ限りなく手作り(^^♪どれが当たるかはお楽しみに(^^)他のデザインがほしい方はたくさん買ってみてください(^^♪

蔵書票。本の中には登場しない蔵書票のためだけの描き下ろしイラスト。かわいい(^^♪

まるめろ型しおり。よく見ると目の向きも違います(^○^)

また本の刊行と同時に現在、泉鏡花記念館にて「企画展 鏡花幻妖アンソロジー 榲桲に目鼻のつく話」展が開催中です。(5/19まで)中川さんの「榲桲に目鼻のつく話」描き下ろしイラスト30点の他、関連資料など計50点が展示中。また本だけではなくPR映像も上映中!こちらは「絵本 化鳥」アニメーションでもおなじみのアニメーション作家、青木香さんと音楽担当、山口智さんによる作品。本では体験できない魅力が満載!記念館に伺えない方のためにもこちらのYOU TUBEで公開中ですので、ぜひこちらもあわせて世界観を膨らませてくださいっ(^^♪

また東京・兒嶋画廊さんでも泉鏡花とシュールレアリズムと題した「マルメロに目鼻のつく話」が4/7(日)まで開催中。ぜひ中川さんの魅惑の世界を本と一緒にご堪能ください。

 

少し長々と書きましたが、これも鏡花&中川さんのまるめろ本の世界、新しい鏡花本を知っていただきたいためです。これから手に取った方々からの感想やご意見などがとても気になりますし、それが今後の励みになります。

そんなこんなでまるめろ本をどうぞよろしくお願いします(^^♪

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